見た目や残業時間ではなく、中身で積み上げると決めた、静かな選択。

病院の医療事務から転職。評価基準があいまいだった環境を離れ、ストレイトライドで一から実績と根拠を積み上げ、自分自身の挑戦を楽しむストーリー。

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大塚美沙季

間違いが許されない場所から、私の仕事は始まった

社会に出て最初に就いたのは、総合病院の医療事務でした。配属は健康診断の部署です。健診というと、採血をする看護師がいて、その近くで事務が受付をしている、そんな絵を思い浮かべる方が多いと思います。けれど、私のいた部署に看護師はいませんでした。医師と、事務だけ。だから事務でできることは全部やりました。身長と体重を測り、腹囲を測り、医師の補助に入り、出てきた数値はすべて自分たちの手で入力していく。血液の数値も、身長体重も、一桁違えば意味が変わってしまいます。結果を別の方へ郵送してしまえば、取り返しがつきません。細かく確認することは、私にとって心がけではなく、前提でした。「なぜそうなったのか」を必ず問われる環境で6年間、私は数字と書類の前に座り続けました。

見てもらえなかったのは、仕事の中身だった

辞めようと思った理由は、ひとつだけです。評価されなかった。事務は私を入れて5人でした。それぞれの事情で残業が難しいこともあり、終わらなかった業務は自然と私のところに残りました。預かって、片づけて、また翌日が始まる。それでも私を評価するのは、同じ現場にいない部署の長でした。その人が見ていたのは、私の残業時間と、髪の色と、爪の長さです。髪が明るいから賞与を下げる。爪が長いから下げる。仕事の中身が話題になったことは、一度もありませんでした。一緒に働いている人に、私が何をしているのかを聞いてくれることもない。アピールする場もない。ないものを責める気にはなれませんでした。ただ、ここにいても中身は見てもらえないのだと、静かに理解しただけです。

一からつくれる場所を、自分で選んだ

辞めますと伝えたとき、先輩たちが「給料を上げるからもう少しいてほしい」と言ってくださいました。ありがたかったです。増も、6年の積み重ねのほうが重かった。積み重なっていたのは実績ではなく、見てもらえなかった時間のほうでしたから。転職活動では事務職を探しました。医療系はもういいかな、と思っていた私が、次に目を向けたのは不動産業界でした。その中でストレイトライドを選んだ理由は、正直に言えば二つです。昇給の幅があったこと。そして、新しい部署を立ち上げると書いてあったこと。事務は女性が多く、長く働いている方も多い。できあがった輪に後から入って馴染めるだろうかという不安が、私にはありました。新しくつくる場所なら、みんなが同時に始められる。一から関われる。その一点で決めました。

大塚美沙季

同じ「事務」でも、まるで違う仕事だった

入ってすぐに、同じ事務でもやることがまったく違うのだと知りました。いちばん戸惑ったのは、社外とのやりとりです。前の職場で私が話していた相手は患者さんでした。敬語ではあるけれど、聞き取りやすく、親しみやすく。それが正解の場所にいたのです。しかしストレイトライドでは、取引先を相手に一般常識としての言葉遣いを求められる場面で、私は自分の引き出しの少なさに直面しました。専門学校で学んだ秘書検定の知識は、もうほとんど残っていません。だから、真似ることにしました。先輩たちがメールで取引先にどう返しているのかを一通ずつ確認して、丁寧な言い回しをそのまま覚える。ほとんど丸暗記です。かっこいい方法ではありませんが、私にはそれしかなかった。

やることが分かる、というだけで

最初の頃、給料はすぐには上がりませんでした。それ以上に苦しかったのは、何をすれば上がるのかが分からなかったことです。とにかく覚えることに必死で、自分が今どのあたりにいるのかも分からない。前職とは違う意味で、足元が見えない時期でした。変わったのは、二年目から三年目にかけて評価の基準が整ってからです。テクニカルクラスという形で、自分が今どこにいて、次に何ができるようになればいいのかが明確になった。やることが分かる、というだけで、仕事はこんなにやりやすくなるのかと思いました。前の職場で私が本当に欲しかったのは、たぶん昇給そのものではなく、これだったのだと思います。

二年分の契約書が、確信をくれた

今の私の仕事の中心は、契約書の作成業務です。作って、確認して、また作る。難しいのは、業者によって作り方がまるで違うことでした。どの条文が何を根拠にしているのか、なぜこの記載になったのか、そのつど調べて確かめる。もともと不動産に関わってこなかった私にとって、何年もこの世界にいる方々との知識の差は、はっきり感じるものでした。負けたくない、というより、負けたままにはしたくなかった。2年間、私が作った契約書はスムーズに受け入れていただいてきましたし、取引においてこの作り方で問題は起きていない。だからある日、一社だけから「これは違う」と指摘を受けたとき、私は初めて、なぜ?どうして?という疑問から、もしかして相手のほうが間違えているかもしれない。それを言えるだけの根拠が、私の手元に2年分積み上がっていたのです。

大塚美沙季

曲げるところと、曲げないところ

難しいのは、正しさを持っていることではなく、それをどう伝えるかでした。相手のほうが経験も長く、声も強い。そういう場面では、私が悪いのかもしれないと思ってしまいそうになります。それでも、根拠があるなら引かないと決めました。繰り返し伝え続けると、通してくださることもあります。同じ内容でも、言い方を変えれば届くことがあります。伝え方でしか動かないものが、この仕事にはたくさんあります。一方で、法律の範囲内でこちらが不利にならない場合は譲歩することもあります。大きな会社には、どうしても変えられない型がある。平行線のまま止めてしまうより、進めたほうがいいときもある。ただ、契約上の不利になる一行だけは、絶対に曲げません。適当にしたくない、というのは、私の中でずっと変わらない一本です。本質と向き合うというのは、たぶんこういう地味な作業のことだと思っています。

届かないなら、届く形に変えるだけ

社内でも同じです。営業には、期限をなかなか守れない人もいます。責める気持ちはありません。人によってやり方が違うということは、前の職場で医師の補助をしていた頃に、嫌というほど学びました。医師は忙しく、前に頼んだことを覚えていないこともある。だから、期限の少し前にもう一度伝えるのが、いちばん届く。同じことです。3年も一緒にいれば、この人はチャットで動く人、この人は口頭でないと返ってこない人、と分かってきます。届かないなら、届く形に変えるだけ。それでもだめなら、何度でも言います。押しつけではなくて、誠実であることが、いちばん現実的なやり方だと思っています。

機械が出せる通知と、人にしか出せない一言

事務の仕事は、これから大きく変わると言われます。実際、できることは増えていくと思います。ただ今の私は、数字が本当に合っているかどうかを最後に見るのは、人の目であってほしいと感じています。言い回しが少し崩れていることもある。細かいところほど、まだ怖い。人の代わりではなく、人の仕事を助けてくれるもの。少なくとも今は、そう捉えています。そして、いずれ確認そのものが自動化されたとしても、残る仕事はあると思っています。期限が迫っています、という通知は機械が出せます。増え、それでも動かない人に、どう言えば動いてもらえるかを考えて、実際に声をかけるところまではできない。書類が合っているかを見る人から、決めた流れをみんながちゃんと通っているかを見る人へ。私の役割は、たぶんそちらへ移っていきます。

大塚美沙季

できることが増えていくのが、今はただ楽しい

前の職場では丸6年、同じ業務をしていました。安定はしていましたが、飽きていたのだと思います。転職して、新しいことを教えてもらえることが、ただ純粋に楽しい。事務という仕事は、会社によってできる範囲がはっきり区切られています。ストレイトライドでは、営業支援部から管理部へ移り、総務や経理まで、任せてもらえる範囲が広がっていく。開発チームの打ち合わせにも、少しずつ入るようになりました。自分にできることが増えていく感覚を、こんなに面白いと感じるとは思っていませんでした。挑戦を楽しむという言葉を、私は今ようやく、自分のものとして使える気がしています。

静かなままで、構わない

これから先、どこまでできるようになるのかは、正直まだ分かりません。一人で総務も経理も営業事務も見られるようになりたい、という目標はあります。細かいところまで確かめられる人は、どの会社でも必要とされると思うから。ただ、それは肩書きの話ではなく、どう在るかの話です。誰も見ていないところで根拠を確かめることを、これからもやめないでいたい。見た目や時間ではなく、中身で積み上げていく。そう決めたところから、私の仕事はもう一度始まりました。静かなままで構いません。積み重ねた分だけ進める場所が、ここにはあると思っています。

担当者プロフィール

大塚 美沙季

大塚 美沙季

事務

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